学会を終えて 骨盤についての見解
今回の日本臨床スポーツ医学会において、興味深い報告がいくつかありましたのでお伝えしたいと思います。
まだ検討中ではあるようですが、靭帯を緩める作用を持つホルモン リラキシンとプロゲステロンとの関連について。
ヨガの世界では「骨盤がゆるむ」「骨盤が開く閉じる」という表現を聞くことがあります。妊娠後期から分娩にかけて骨盤を形成する靭帯がゆるみ、骨産道を広げ、分娩をスムーズなものにすることは知られています。このイメージによって、妊娠中もしくは産後ではない女性も靭帯がゆるみ、あたかもチューリップが開くかのごとく「骨盤が開く、閉じる」と表現されてしまっているのではないかと私は考えています。
この分野はまだまだ曖昧な表現で説明されていることが多く、リラキシンに関する研究の今後の結果が待たれるところです。しかし、ひとつだけ確かに言えることは、妊娠中、産後ではない女性の骨盤において、私たちが目で見てわかるほどの変化をすることはないということ。ヨガを指導する立場の方にも、科学的に説明できることがらはあくまで正しく理解していただけたらと思っています。
また、骨盤底筋群収縮に関する研究も非常に興味深く拝見しました。骨盤底筋群は、女性にとってなかなか言い出しにくい尿失禁や子宮脱といった疾患にも大きな影響を与えています。
骨盤底筋群を収縮させ、ある意味鍛える「骨盤底筋体操」という言葉を耳にすることも多くなっています。本当に困って心からなんとかしたい、藁にもすがりたい、そんな真面目な気持ちで「骨盤底筋」というキーワードのヨガクラスやストレッチクラスに参加される方もたくさんいらっしゃること思います。
指導する立場の方にはこのあたりの正しい情報を知っていただき、本当に困っておられる方を裏切らない努力をしていただきたい。また、指導者を指導する立場の方は特に、自分が自信を持てない情報を広めないこと。指導される側も、クラスの名前や雰囲気だけで選ぶことをしないこと。
今回は、骨盤底筋群を収縮させるためにより効果的と考えられる骨盤の傾斜について、正しいと思われる知識を得ました。
私からの情報は、エビデンスがあり間違いなく正しい情報と、現在のところ正しいと思われる情報 にわけてお伝えしています。そのあたりをご理解いただけたら嬉しいです。