【参考書籍】について 私が参考にするものは

先日の講座をお受けいただいた方から、どんな教科書や書籍を参考にしているかという質問がありました。当然のことではありますが、私にとってはすでに身についてしまっている知識をお伝えしているケースがほとんどです。講義の準備をする際に、細かな点、間違えやすい点、あやふやな点を確認するためには簡単な医学生向けの書籍を使用します。新たな知見に関しては近年発表された学術論文を参考にするほか、学会で聞いたもの、学会が開催する講習会などで聞いたもの、医師会の講習会などで聞いたものから、より信憑性の高いものだけをチョイスしています。

みなさん、学会で発表されたお話しは”正しい”とお思いになられると思います。しかし医学の世界でも科学の世界でも同じですが、学会で発表されただけでは”ほんとうに正しいこと”とはなりません。学会で発表するしないに関わらず、世界共通で存在する”学術雑誌”に掲載されると、そこで初めて”ほんとうに正しいこと”と認められた という扱われ方をするようになるのです。

世間を賑わせた小保方晴子氏の件に関しても、Natureという世界的に特に権威のある学術雑誌に掲載されたからこそあれだけ騒がれたわけであり、それがほんとうではなかった(可能性が高い)という事実が、その権威を失墜させるに値する出来事だったというわけです。あの発表が、ただ学会でなされたものに留まっていればここまで注目されることもなかったでしょうし、ほんとうに正しくはなかったと分かっても、ここまで騒がれなかったことでしょう。学術雑誌に掲載されたものであり、かつその雑誌がNatureだったからこそ、研究者にとってのショックは大きかったわけです。

そのくらい、学術雑誌に掲載されるということは価値があることです。和文の雑誌に掲載されることはそれほど大変なことではありませんが(もちろん努力は必要です)、英文の学術雑誌に掲載されるまでというのは凡人の医者、研究者にとってはとても遠い道のりなのです。私も大学院時代、大学院修了後に継続してきた卵巣がんの遺伝子変異に関する論文を書き、投稿してきました。投稿しても、権威の高い学術雑誌に認められるものは毎月全世界で数本/各誌 であり、簡単なことではありませんでした。私の場合は結果的に、共著も含め10本弱の論文が世の中に”ほんとうに正しいこと”として旅立っていきました。研究を”かじった”程度の研究者としては、幸運な本数と言えると思っています。共著の先生方、ご指導いただいた恩師にあらためて感謝したいと思います。

学会で報告され、ペーパーというかたちで投稿され、幾人もの厳しい目で確かめられて掲載を許された論文 から、だんだんとスタンダードな知識となっていきます。近年話題の大豆イソフラボンから代謝されるエクオールに関する知見もそう、今では私たちの常識ともなっている 『エストロゲンが卵巣から分泌される』 という知識も、もともとは1901年メスのヒヒの卵巣を切除したところ月経がみられなくなった という研究・報告から知られるようになったものなのですから。

次の記事には、医学的なベースがあまりない状態でもなんとなくわかる そんな基準で選んだ参考図書を掲載していこうと思います。参考にしていただければ幸いです。

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