メンタルヘルス勉強会
メンタルヘルスに関する勉強会に参加しました。普段この分野に接する機会はなかなかなく、勉強する機会もそれほど多くありません。しかしメンタルヘルスのベースとなる考え方は医者としての診療上 必須でしょうし、”若者”の思考回路を知ることは、産婦人科を訪れる若者のたまにある「大人が理解できない言動」に少しでも寄り添うことができる方法なのではないかと考えています。
今回の学びではいくつもの”目からウロコ”な事実がありました。メンタルヘルスについての広い分野でたくさんの学びがありましたが、もっとも衝撃的だった『自傷行為』『過量服薬』について少しだけご紹介します。
若者の1割は自傷経験がある
刃物で切るタイプの自傷行為をしたことのある男子中高生は 7.5%、女子中高生は 12.1%。そんなにいるってこと!しかも、自傷行為を10回以上繰り返している人はなんとそのうちの6割!
さらに、保健室・担任などからの聞き取りによって学校が把握している自傷行為の発生は 中学生で0.33%、高校生で0.37% つまり、本当は10%の生徒に起こっているトラブルを30分の1しか把握していないという事実。
自傷行為はアピールじゃない
なぜなら、96%の自傷行為はひとりぼっちで隠れて行われるものだから。しかも病院にも行かない、大人にも助けを求めない。だから、アピールであるケースは多くない。
なぜまわりの大人に助けを求めないか?
① まわりに信頼できる大人がいない (家庭内での暴力など)
② 自分はいなくなってしまった方がいい価値のない人間である。そんな人間が忙しい大人の時間を奪うのは申し訳ない
③ 大人に相談してみたことがあるが、もっとひどい状況になってしまった経験がある (自傷行為をして病院にかかってみたら罵倒された→二度と病院や医者には相談しなくなる)
自傷行為には一時的な鎮痛効果と抗うつ作用がある
だからこそ誰かに自傷行為を見られたときには晴れ晴れした顔をしていることが多い。それゆえ、見られた相手に怒られ、さらに助けを求めなくなってしまう。
過量服薬による酩酊中にほんとうに自殺するケースが多い
くり返すうちにだんだん一時的な鎮痛効果も弱くなってくる。自傷行為では死ねないことはわかっているし、耐性、依存性が出現するため、過量服薬へ移行する。
過量服薬はまわりを巻き込みすぎるため、まわりのサポーターはどんどん減るし、オオカミ少年のように「またか!」と思われるだけになっていってしまう。
過量服薬による酩酊状態のときには死に対する恐怖心がうすれるため、このタイミングでほんとうに自殺してしまうケースが多い。
10代に自傷行為、過量服薬した経験のある人は、10年以内に400-700倍も自殺することがわかっている。
なにごともなく生活している人のうち19.1%が真剣に死のうと考えたことがある
しかし、死への恐怖心のためにどうにか死なずに済んでいる。
こんな、かなりショッキングなデータを知りました。
こんな出来事に遭遇したらどう対応すべきか、どういう姿勢をもつべきか、どんな言葉をかけるべきか、そのあたりの考え方や方法について、対ひとの職業を持つ者としてものすごく勉強になりました。また、
私はこれまでに救急外来を除いて、2人のリストカットを間近で見ています。どちらも大切な友人。どちらの時も、医者としても友人としても、どう対応してよいかわかりませんでした。そのとき自分がとった行動が正しかったのかどうなのか、ずいぶん時間がたってしまった今となってははっきり言えません。しかし、どんなメンタルトラブルであれ、『”見える傷”の向こう側にある”見えない傷”を考える』 つまり、目の前にあるトラブルだけでなく表に浮かび上がってきていない背景について考える必要がある、この姿勢を忘れないように接していきたいと思いました。
専門外の学びから得られるものはとても大きいし、大切ですね。