指導者養成講座 という仕組みに思う

私はこの秋に、はじめて指導者養成講座を担当することになります。この件にまつわる思いを書き記したいと思います。

これまで私自身、数え切れないくらいの指導者養成講座というものに参加してきました。ヨガの世界の指導者養成はもちろんのこと、食の世界、運動の世界、かかったお金は総額にするのが恐ろしいほど。そう、世の中の「指導者養成講座」というものは、恐ろしいほどお金がかかるものなのです。

値段が高くても、当然と言えば当然です。なぜなら、一生その資格で食べていけるかもしれないわけですから。

しかし、AV○VAが流行らせた とまでは言いませんが「仕事するならとりあえず資格」のような時代を経て、資格ビジネス、協会ビジネス そう呼ばれるようなビジネスモデルすらたくさんあるこの時代。「とりあえずの資格」を持てばほんとうに一生食べていけるのか、潰しが効くのか。それはもちろんどこの誰が認めた資格かにもよるし、その資格を取得するためにどのくらいの年月を要したか、どのくらいの人が保持していて、どのくらい需要があるのか、そのあたりで違いがあって当然なわけです。

つまり、いただける資格というものはがんばって積み重ねた先に、あとからついてくるもの。資格ありきで勝負はできないでしょ、ということ。こんなような意見は、これまでも多くの方がいろいろなかたちで表現しておられます。その通りだと思うし、すでに今の時代、資格を持てたからそれだけでなんとかなっていく なんて考えている人の方が少数派になっているとも感じています。

少々話しは逸れますが、医者の世界にだってこのビジネスモデルはそのまま構築されています。

学会に入る=まず入会金を払う、毎年の会費を払う、何年間か所属していないとその学会の専門医試験が受けられないから数年とりあえず所属、専門医試験の受験資格を得たら資格試験に審査料を払い、合格したら専門医登録料を払い、そこから3年なり5年なりで専門医更新がやってくるまでの間に学会参加もしくは研修会参加でもらえるポイントを集め、当然それらの学会研修会参加にも参加費が必要で、無事にポイント数をクリアしたら専門医資格を更新していただけてそこで専門医更新料を払う、と。退会するにも、支払っていない年会費があれば払い切るまで退会すらできない。払い終わるまではものすごい額に膨れあがった請求書がマメに送られてくる。そんなシーンを実際に見たことがあります。ね、すごいでしょ。

もちろん産婦人科医にとっての日本産科婦人科学会の専門医や内科医にとっての日本内科学会の専門医など、持っていないとお話しにならない専門医資格はこうであって然るべきですが、お金儲け主義としか思えないような仕組みを持つ学会は実際にあり、持っていても持っていなくても実働としてはほぼ変わりはない学会認定の資格に、それでもがんばって取得したんだから と決して安くはないお金をかけて更新していく現実。

医者の世界こそ、興味があって、好きで、患者さんのため社会のためになるからと学んだその先に資格がついてきました、であってほしいものです。 少なくとも私自身は、自分がお世話になる学会をそのように選んでいます。

世の中には、医師の資格のようにしっかり役に立たせられる資格もあれば、本気で持っていても仕方ないような このお免状はどうしたらいいですか?的な資格まで様々あると思っています。

そして修了書、修了証、ディプロマ、いろんな表現がありますが”とりあえずの厚紙”が手に入ることで「指導者養成講座」のお値段が跳ね上がっているのは事実。もちろん規定の時間を、規定の内容をちゃんと終えました という証明にはなるわけですから大切な厚紙ではありますが、その厚紙にどのくらいの価値があるのか。それは、その紙を受け取る人次第、ということになりますよね。 修了書、修了証、ディプロマなどを受け取って、そのこと自体が自信や自己効力感につながって これからがんばれます! それならそれで、”厚紙”は大きな意味をもつわけですから。

これまでに、ヨガの指導者養成講座を開催しましょう、開催してください というお話しは何度もあり、何度となくお断りをしてきました。なぜなら、指導者養成講座のあとに発行される”厚紙”に、その値段だけの価値を見出せずにいる自分がいたから。同じ内容のワークショップを、”厚紙”なしのお値段でやったらいいじゃないの、と。

でも今回、これからの日本にこの分野の指導者が本当に必要だから、この分野ならやろう、そう思ってご依頼をお受けした。それだけの覚悟を持ってお受けした指導者養成講座が秋に開催となるわけです。

実は、9月10月にわたって開催する「骨盤底筋トレーニングヨガ指導者養成講座」 このイントロダクションにあたる講座を今週末に開催します。こちらのBlogではまったく紹介すらしていないその講座は、あっという間の満員御礼をいただいており、みなさんからの期待を感じていないといったら嘘になります。その期待が、なにか新しい内容のことを学びたい、なのか、骨盤底筋について学びたい、なのか、私から養成講座を受けたい、なのか、それは正直わかりません。

でも私が、これからの日本に「骨盤底筋へのアプローチについてきちんと理解している運動指導者が増える必要がある」と思うからこそ、この”厚紙”に見合っただけの内容を準備しています。

つまり、

“厚紙”をもらったら、ちゃんとまわりに教えてよね、広めてよね、伝えてよね、困っている人の役に立ってよね、ということ。

“厚紙”の分を含めたいいお値段を払ってくださった方に、少なくとも”厚紙”の分のペイバックがちゃんとあるように身につけてよね、それを社会で活かしてよね、ということ。

私から”厚紙”を手渡されたんだから、自信持って伝えてよね、ということ。

これが、私がよく言う「みなさんのまわりにいる10人を連れて、元気なお年寄りになっていく」 ひとつの方法。そう言い切れるから、この分野の指導者養成講座 というものの開催をお引き受けしました。

私の思いがみなさんに届きますように。

そして、ヨガの世界に限らず世の中にある指導者養成講座 というものに携わるすべての先生方に、指導者を養成する ということが持つ意味やそこに生じる責任を、今一度 考える機会をお持ちいただけたらと思います。

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