裏原での出来事

ある暑い日の昼下がり、イーク表参道での勤務中にこんな出来事がありました。
冷房がよく効いているクリニック内から、一歩非常階段へ出ると、夏の空気が待っています。
しばしの休憩を、この非常階段で楽しむことが多いのですが、その日は非常階段から下の世界でなにかが起こっていました。

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『おばちゃん!おばちゃん!』
若い女性の叫ぶ声にそちらを見下ろしてみると、裏原の細い路地に人が倒れているのがわかりました。
また、『おばちゃん!おばちゃん!』と。
2回目のこの声に、人が反応していないことははっきりと判断できましたので、白衣もはおらず、携帯だけをつかんで内履きのまま走り出しました。
『ヒトが倒れてるから、誰か一緒に来て!』
そう言い残し、階段でダッシュ!
Nsがひとり、追いかけてきてくれました。
倒れているのはおばあさん、横には姪にあたる中年の女性がおろおろと立っており、一生懸命声をかけているのは向かいのショップの若い女性店員さん2名でした。
私が医者であることを伝え、状況を確認するに、おばあさんが先に、姪の女性が続いて階段をおりてきたところ、おばあさんが足を滑らせて下から7段目の位置から落下、はじめに背中を打ち、頭を打った模様。
意識は呼名に応えられず、開眼がやっと。
明らかな外傷、出血はなく、左右の瞳孔差、散大なし、脈は左右ともに整で70前後、救急隊へはcall済みだったため、姪の女性から常備薬、かかりつけ医を聞きながら救急隊の到着を待ちました。
イークのスタッフも、血圧計、聴診器など持って次々集まりバイタルチェックは完了。
その間に、アイスノン、タオル、なぜか冷えピタ、そして除細動器まで、さまざまなものが若い女性、男性、いろいろな人の手によって倒れたおばあさんの元へ集まってきました。
暑い日でしたから、熱中症で倒れたと思われた方が多かったのでしょう。
幸いにも、救急隊が到着した時には名前が言えるまでに回復しており、警察、救急隊に引き継ぎの上、撤収しました。
裏原での出来事を見て、日本もまだまだ捨てたもんじゃあないな。倒れている人、困っている人を見て なにかをしようとする気持ちは若い世代にもちゃんとあるんだな。そう感じました。
正直、うれしかったです。
私もなにかを見、感じたときには 自分の立場以前に、人としてなにができるかを考えていきたい。そう思いました。

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