「インフルエンザワクチンを打つ」という選択肢があるということ

昨年の今ごろ、不特定多数の人と接触する可能性がある職業の方はインフルエンザワクチンを打ちましょう!そんなblogを書いたことを覚えています。世の中においては例年のように、多くの医療機関でインフルエンザワクチンの接種を行う季節となり、私が関わっている医療機関すべてにおいてインフルエンザワクチンの接種が始まっています。医学部で学生時代を過ごし、研修医、勤務医と年数を重ねてきた私にとって、インフルエンザワクチンを打つことについてなんの疑問を感じることもなく過ごしてきました。私自身はご多分に漏れず今年もワクチンを接種しました。
しかし昨今、SNSをはじめとする情報源から流れてくる「インフルエンザワクチンは打つべきか?」といったワクチン接種に否定的な意見が私を不安にさせてきたことは否めませんでした。今年もblogを通じて「インフルエンザワクチンを打ちましょう!」と言ってしまって良いものかどうか。そこで今一度、インフルエンザワクチンの効能について再検討してみました。

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インフルエンザワクチンが「効く」かどうか、という点において、「インフルエンザにかからない」ことを「インフルエンザワクチンが効く」とするならば、こんな報告があります。インフルエンザワクチンを接種した65歳以下のインフルエンザ発症のうち、ワクチン接種によって70%から90%が感染を予防できる。つまり、ワクチンを打った人のうち7割から9割の人はインフルエンザにかからない、というデータです。これはあくまで健康な人のデータであり、入院中の人や高齢者ではもっと低い感染予防率となります。
続いて接種に反対をしている情報を詳しくみてみると、インフルエンザワクチンを打つべきではない としている情報の多くが1987年にまとめられた前橋での調査結果を根拠としているようです。その後、同様の大規模調査は各地で続けられており、近年の報告では「周囲への感染予防効果を認める」という結果が散見されます。
以上より、私はインフルエンザワクチン接種の有効性を再確認することができました。外来でインフルエンザワクチン接種に関して相談されたら、これからも接種をおすすめしたいと思っています。しかし、現実インフルエンザワクチンを打つことに関して反対の人はいますし、ワクチン接種による副作用 つまり腕の腫れや風邪っぽい症状を強く経験された方は打たない方が得策かもしれません。
「打つべき」「打たないべき」と医師が決めるのではなく、みなさんがご自身で納得して「打つ」「打たない」を決めるべき。そんな時代なのかと改めて感じました。私たち医師の役割は、ワクチンを打ちましょう と言うことではなく、「インフルエンザワクチンを打つ」という選択肢があるということをお示しすることなのかもしれません。
ただし、ワクチン接種の有無にかかわらず、感染予防のエチケットは皆で守りましょう。
1 咳、くしゃみのエチケットを守る
2 外出後の手洗い・うがい
3 適切な湿度をキープする
4 十分な休養と栄養摂取
5 人混みや繁華街への外出を控える
特に、明らかに体調がすぐれないときは自分が感染源になりうるということを念頭に、すべての行動を控えめにされることをおすすめします。

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