学会で思うこと〜学びがもたらすもの
大きな学会に行ってうれしいなと思うことはやはり、後輩たちに会えること。真面目ではない、もしくはウソをつくなど人としてどうかと思う後輩には厳しかったかもしれませんが、努力している後輩、実直な後輩、表舞台に出ない仕事をちゃんとやれる後輩にはとにかく心を配るようにしていたおかげか、大学を離れた今も多くの後輩が連絡をくれます。いつまでも後輩後輩と思っていても、彼ら彼女らも当時の私くらいの学年になっていたりもしますので、一人前に外来を持たせてもらったり病棟での責任者になったりしているようです。
今回学会で立ち話をした彼女らの目下の悩みは、研究実験と臨床(手術や外来、病棟業務)の両立について。あたりまえのことですが、両立はたいへんなこと。ちょうどそんな悩みにぶち当たるころなのでしょう。
この学会に参加して思ったことは、やっとこの歳になってきて学会が楽しいってこと。学ぶって楽しいって思えるってこと。
大学に所属して学会に演題を出していたころ というのは、正直言うと学会ってものが本当にキライでした。まず学会の年会費が高い。学会参加費が高い。ついでに大きな学会というのは演題の締切が学会の6か月前。まともに研究をしてその結果を発表しようという人にとっては、あまりに締切が早すぎるために抄録(6か月前に提出する発表内容)と学会当日の発表内容が違っていてあたりまえ という矛盾。地方部会や小さな研究会まで入れると多すぎる学会数であり、抄録の締切期日と学会本番の準備が交互にやってくるという圧迫感。たまにやってくる国際学会での発表のプレッシャー。そのうち後輩の発表の指導なんて仕事も増えてしまい、自分の分と後輩の分と、丸々2倍に。いい発表であればその後論文に仕立て上げなくてはというおまけつき。
せっかく学会に参加しても、せっかく高い参加費を払っても、自分の発表に精一杯で人の発表に興味を持つ とか教育講演で学びなおす なんてことは時間的にもパワー的にも無理でした。
そんな時代から約10年が過ぎ、昨日も今日も、私ってほんとに勉強するのが好きなんだなぁって思える瞬間が何度もありました。自分の好きな分野のことをもっと知るっていいな、改めて知識を確認するっていいな、そんな好奇心いっぱいのわくわくした気持ちで学会期間を過ごしました。スピーカーの先生が話す一言をも聞きもらしたくない、できることならそのまま丸々頭に叩き込みたい、それくらいの気持ちでした。
ヨガの分野の方でもトレーナーの分野の方でも、私のセミナーを聞きに来てくださった方とSNSで交流を持ってわかったことがあります。それは、学ぶことが好きな方が私に会いに来てくださっているということ。
知らないから来る。知りたいから来る。はっきりさせたいから来る。自分の仕事に活かしたいから来る。
そんなみなさんのお気持ちに応える。それが私のすべきことです。
だからこそ私も学び続けるし、どんな順序で話したら一番伝わりやすいか、どこにどの症例の話しを盛り込んだらより理解につながるか、どんな図をチョイスするか、スライドの構成をどうするのか、どんな質問がきそうか、暇さえあればそんなことを考えているわけです。
自分自身の分野についてであれ、直接は関係のなさそうな分野についてであれ、学ぶことは自分の血となり肉となり、鎧となり盾となり、またあるときは牙となり剣となり、自分が自分らしくいられるよう守ってくれます。
自分らしい方向性で仕事をすすめられるために、同じ分野の中でも自分らしい光る独自性をもち続けるために、一緒に学びましょう。
今回の学会で、こんな案内を見つけました。
卵巣がん手術アカデミー。昔お世話になった寺内先生主催の勉強会です。卵巣がんを専門にがんばっていた当時の私だったらきっと、喜んで参加していただろうな。そんな思いを抱きながら今年の日産婦を終えました。