共同研究「液状処理細胞診検体からの子宮頸部細胞診、ハイリスクHPV、およびクラミジア・トラコマチス同時検査の探索的研究」
愛知医科大学産婦人科学教室との共同研究「液状処理細胞診検体からの子宮頸部細胞診、ハイリスクHPV、およびクラミジア・トラコマチス同時検査の探索的研究」の結果がまとまり、いくつかの学会で報告することが決まりました。
この研究の目的は、婦人科検診をメインとする施設、子宮頸がん検査で異常を指摘され二次検査として行く大学病院、主に性感染症治療目的の患者さんが多い歓楽街のクリニック、この3種類の施設で、子宮頸がん検査と一緒に子宮頸がんの原因となるハイリスクHPVの検査、クラミジアの検査が同時にできたとしたらどんないいことがあるだろうか。逆に、性感染症の検査を受けに来る人(性感染症の検査目的に来る患者さんはたいてい、性感染症にのみ着目しており、子宮頸がんの検査の必要性を感じていない方が多い)に、クラミジアの検査と同時に子宮頸がんの検査ができたらどんないいことがあるだろうか。こういった視点からの疫学的な研究です。
子宮頸がんは性交渉をきっかけとするHPVによる感染症であるわけなので、性感染症を心配する方には子宮頸がんについても心配していただきたいのが正直なところです。でも実際のところは、かゆみやクラミジア、淋菌、トリコモナスなどを心配して来院される方の多くは、子宮頸がんの検査も性感染症の検査と同じように心配すべきことがらだということを感じていらっしゃいません。
今回の研究では、このポイントに関するしっかりとしたデータが出ました。
詳細は学会発表まで控えますが、当院のような婦人科検診目的の方が多いクリニックでは子宮頸がん検査に異常がみられた症例は6.6%だったのに対し、性感染症治療を主に行っているクリニックでは子宮頸がん検査で異常がみられた症例はなんと32%。その多くの方が、もともとは子宮頸がんの検査を希望しているわけではないわけで、この研究によってたまたま指摘された、ということになります。(当院で採取した検体は、すべてが人間ドック目的に来院された方の症例であるため、婦人科検診目的 と表記しています。)
性感染症を心配する方に、どんなに子宮頸がん検査を受けていただきたいか。この数字からも伝わりますでしょうか。
この研究結果は今年の日本婦人科感染症学会(東京)、日本女性医学学会(京都)、日本性感染症学会(岡山)で発表となります。こうした研究結果から、より必要な方に早期発見のための手段をお伝えできたらと願っています。