オリジナルから学ぶ習慣を身につけたい
講師業をされている方にはついてまわる悩み。きっと私以外の多くの方も、一度は悩んだり迷ったりイヤな思いをされたりしたことがあると思われます。先日集った講師業をしている運動指導者 しかも大御所ばかりの食事会でも、この話題は尽きませんでした。資料を丸々パクられた、メソッドごとパクられた、対策として配布資料を減らしている、以降 いろんな理由をつけて受講拒否している、パクったセミナーを開催しているジムや主催側に抗議した、などなど著作権といってもどこまで守られるものなのかもクリアではない中、多くのみなさんが困っておられる現状を聞き、やはりどこにでも誰にでもある問題なのだとあらためて感じました。
自分が教えた方のセミナーなどを受けに行くことはありませんので、私の講義内容がパクられているかどうかを知る機会は基本的にありません。ただ、こういう話題は回りまわって届けられてしまうもののようです。あの人のセミナーは先生のとほとんど一緒だったよ、あそこでやるセミナーのコンテンツ 並びがまったく同じだったよ、先生のと同じ資料 使ってたよ、と。
それを知った私、それを聞いた私がどう思うか、どう考えるか についてお話ししたいと思います。
まず、医療系だけでなくどんな内容の話しであれ、1回や2回話しを聞いたくらいで他人に教えられるようにはなれない、これは間違いないと思っています。良く言われることですが、どれだけ集中して聞いていたとしても正しく記憶されるのはその20%。ということは、まったく同じ話しを5回聞いてはじめて、100%に近くなる可能性がある、その程度。私はリピートしている講座であっても毎回内容を更新しており、まったく同じ内容のものはありませんから、そもそも5回も聞けない。さらに言えば、私の話す内容には私の医者としての、もしくはヨガをしてきた上での経験が含まれているので、その話しは他の誰にもできないはず。あたりまえです。私の経験なんですから。
ということは、丸パクされてるよ、と言われても そもそも丸パクはできない、ということ。ということは、類似の何かを聞く方にとっては、質の落ちたコピーにお金払って聞いている、ということになります。そうならないために、選ぶ側がオリジナルをきちんとチョイスして学ぶ姿勢を身につけたい。
以前パクっていると聞いた相手に、当方の事務局から直接 開催の中止をしていただくよう申し入れたことがあります。その際のやりとりで感じたこと、そしてここ数日 同じようなことを目にして感じていることは、パクっている人にはパクっているという認識がないし、そのことに対する罪悪感もない ということ。ですから、本人が 自分はパクっているんだ と気づく ということは意外なほど難しいことなのかもしれません。でもその方のセミナーなりを主催するジム、主催者は世間から ”本物を見抜く目がない” と思われても仕方ないですよね。
私は漢方について学んでも、アンチエイジングについて学んでも、スポーツ栄養学について学んでも、メンタルについて学んでも、ビジネススキルについて学んでも、それらに関するセミナーを開催することはありません。あたりまえです。それはもちろん、自分がそれらについてのスペシャリストではないことを自分でわかっているから。トレーニングのスペシャリストがアンチエイジングのスペシャリストでもあること、女性ホルモンのスペシャリストがメンタルヘルスのスペシャリストでもあることはまずない、あったとしてもどちらかがより得意分野で、どちらかは比べてみれば得意ではなかったりするわけ。人に教える なんてことは、自分の本当の本当の得意分野であったとしても難しいことであるはずなのに。
実技系のセミナーであれば、きっと丸パクは無理。講師が持っているスキルは セミナーに参加してしまえば一目瞭然でしょうから。しかし、知識・情報系のセミナーは 同じような話しをしようと思えばできなくもないでしょう。でも結局思うところは、誰から学ぶのか。そこに尽きるわけです。
私が教えていただきたいとお願いする方は、正直 選びに選び抜いて選んだ方。その方の学びのルーツやその上流にいる方までわかる範囲で把握し、この方から学びたい!という方にお願いをします。同じ組織、同じ立場におられる方が2人いるとしたら、どちらの方が私に合うか、どちらの方から学ぶことがより私の今後に生きるか について、内部を知る方からアドバイスをいただいたりもします。なぜそこまでこだわるかといえば、本物から直に学びたい という気持ちが強いことと、手当たり次第に学んでいる時間がとれないためです。
せっかく学ぶなら、オリジナルから学ぶ習慣を身につけたい。せっかく学ぶなら、信頼に値する人からの勉強をしていきたい。さらには 聞いたことを鵜呑みにするのではなく、常に前向きに疑いながら自分で根拠を確かめる、信頼できる情報かどうかを検証する そんな習慣をつけて学んでいきたい。
これらのことは本来、学ぶ側の誰もが意識すべきこと。そして学ぶ側が賢くなれば当然、質の落ちたコピーのような諸々は 業界の中でも淘汰されていくことでしょう。教える側に立つ人間も、他の分野のみならず自分の得意分野についても学び続けていくのが本来の姿ですから学ぶ側にも立ちます。学ぶ側が意識高く選ぶ そんな業界に成長していく必要があると思っています。