子宮頸がん予防ワクチンについて

アメリカにおけるヒトパピローマウィルス(HPV)感染が、HPVワクチン導入以降急減しているという報告がJournal of Infectious Diseasesに掲載されました。米国癌協会(American Cancer Society)による研究です。

American Cancer Society

この研究は、米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention)が、女児および成人女性のHPV罹患率を、ワクチン導入前と導入後について比較したもの。14-19歳女性のHPV罹患率は、ワクチン導入後56%減少したことが報告されています。

現在日本ではHPVワクチンとしてCervarix(サーバリックス)とGardasil(ガーダシル)が認可されています。
HPVワクチン接種による副反応に関する報道により、8月16日時点では厚生労働省より 『現在、子宮頸がん予防ワクチンの接種を積極的にはお勧めしていません』という通達が出されています。

日本において、Cervarix(サーバリックス)は発売以来2012年12月末までに684万4000本、Gardasil(ガーダシル)は144万6000本接種されています。

もっとも知られている副反応はサーバリックス2回目の接種後、同側腕の腫脹、疼痛、しびれがあり、その後全身に痛みが広がり疼痛のため歩行困難になったという事例かと思います。
これは、ワクチンの成分によって起こるわけではなく、複合性局所疼痛症候群つまり外傷、骨折、注射などの刺激がきっかけになると言われています。
ワクチン接種後に複合性局所疼痛症候群を発症したと考えられる事例は3例報告されていますが、これまでに接種されたHPVワクチンの数からすると、発症頻度は極めて低いと言えるでしょう。

現時点での私たち産婦人科医の役割は、HPVワクチンを強く勧めるということではなく、接種について不安を抱える被接種者や保護者のみなさんへ 医学的視点から有効性および安全性等を説明、ご理解いただくことだと思います。

現実、副反応に悩んでおられる当事者やそのご家族、まわりの方々にとっては発症頻度が低いということはなにも意味を持たないことであることも重々理解しています。
一方、名古屋で所属していたソフトボールチームのチームメイトを、進行した子宮頸がんで亡くしている私にとって、子宮頸がんを予防できる方法があることを多くの方に知っていただくことは私の義務だとも思っています。

当時、まだ駆け出しの産婦人科医だった私。
36歳で手術、化学療法、放射線療法まで尽くせる手はすべて尽くしても3歳になる娘さんをのこし亡くなった彼女のことをいまだ鮮明におぼえています。

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HPVワクチンに関する大事なポイントは
♦ 子宮頸がんの約70%の予防が期待できる。しかし、HPVワクチン接種を受けた女性でも16型、18型以外の発がん性HPVに感染するリスクはある。
♦ 子宮頸がんや前がん病変、すでに感染しているHPVに対する治療効果はない。
♦ HPVワクチン接種後も子宮頸がん検診をうける必要がある。
♦ HPVワクチン接種前に、原則としてHPV-DNA検査は必要はない。(HPV抗体の測定は臨床的におこなわれていない。)
(東京産婦人科医会ニュース参照)

まず、正しい情報を得ていただいたうえで、ワクチン接種の是非をご検討ください。
接種についてお悩みの方は、ぜひ婦人科医のもとへご相談いただければと思います。

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