かき氷の約束

先月、9月にまた来るとおっしゃって帰られた患者さんが、再びイーク表参道に来てくださいました。29歳の彼女は、心の病に悩む彼との関係をどうしていったらいいかわからず、ふさぎ込んで来院された方でした。
季節を楽しむということ

そんな彼女、再び私の前に現れた彼女は まったく別人のようでした。お肌のつやも良く、お化粧もキレイにしていて目に力もあり、姿勢すら良くなっていました。話す言葉もハキハキしており、正直同じ人だとは思えなかったほどです。

彼女は言いました。
『ここに来たあの日のうちに、絶対かき氷を食べなくちゃ!と思って、夜までやってるかき氷屋さんを探して行ったんです』
以前から、彼との悩みを相談していた友達についていってもらって、銀座でかき氷を食べたそうです。夜8時30分までかき氷を食べさせてくれる立田野というお店で、1000円の宇治金時を食べたと話してくれました。それから少しずつ元気になっていったとのこと。私からの、突拍子もない提案を受け入れてくれた彼女。その突然の誘いにのってくれた彼女のお友達。一番困っているときに、突然の誘いに応えてくれる友達がいること。それがなによりも大事です。

彼とその後どうなったかは聞いていません。きっと、話したいと思ったときに話してくれるだろうし、今の彼女にその話は必要ないと思ったから。

彼女は、何度もこう言ってくれました。
『あの日ここに来て、本当によかったです』
私は彼女からこの言葉を聞いて、本当にうれしかったです。時間を使って手間をかけてクリニックに来てくださった方に、来てよかった と感じていただけること。いらっしゃるみなさんそれぞれ、ゴールは違います。眠れないくらいのかゆみをとってほしい方、がんの心配をなくしてほしい方、違う治療方法がないか知りたい方、それぞれの方が ああ、今日来てよかったな そう思っていただけたら、それ以上医者冥利に尽きることはありません。

今年の夏は、かき氷だけで終わっちゃった。秋は楽しもうと思って。
そう言って29歳の彼女は帰っていきました。
楽しい秋がきっと待ってることでしょうね。

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