美しい日本語をつかうこと
私が以前からお手伝いさせていただいているクリニックは、Dr以外のスタッフの接遇教育に力を入れています。受付、医療事務、Ns、看護助手すべてのスタッフがとても気持ちのよい言葉をつかいます。ご案内に関する多くのフレーズがマニュアル化されており、スタッフは決められた言葉をつかうよう教育されているため、知らず知らずのうちにすべてのスタッフが耳ざわりのよい言葉のみを発するようになっているようです。
そのクリニックでは、時間がないという理由でDrへの教育はありません。ただ、美しい言葉をつかうスタッフに囲まれて外来を行っていると、自然と私の言葉も、彼女たちと似てくるから不思議です。
かしこまりました。
つづいてご案内いたします。
他になにかお困りのことはございますか?
では、診察をさせていただきますね。
こちらのお薬をお持ち帰りいただきます。
たとえばですが、私が大学病院のせわしない外来だけを経験してきたとしたら、このような言葉が自然に出てくるような医者にはなれなかったように思います。
もちろん、一分一秒を争うような緊急事態ではそのような余裕はありません。普段の診療で、かつ不安をいっぱい抱えて来院される女性の気持ちを少しでも和やかなものにできるのであれば、美しい日本語を選ぶことはとても意味があることに思えます。
名古屋に暮らす私の母は、立ち振る舞い、言葉遣い、心遣い、どれをとっても日本が理想とするような女性です。私がもっと若かったころは流行りの言葉遣いをしてみたり、あえてがさつな行動をしてしまったりしたこともありました。私自身が年齢を重ねた今、母の素敵なところが私に遺伝子として受け継がれていると信じ、接する多くの方に気持ちのよい思いをしていただける身のこなしをたしなんでいきたいと思っています。