北風と太陽
今日、他院において子宮頸がん検査で異常を指摘され、イーク表参道を受診された患者さんが言っていた北風と太陽のお話し。有名なイソップの寓話で、北風と太陽が力比べのために旅人の上着を脱がせることができるか、という勝負をした、という物語り。
まず、北風が力いっぱい吹いて上着を吹き飛ばそうとした。しかし寒さを嫌った旅人が上着をしっかり押さえてしまい、北風は旅人の服を脱がせることができなかった。次に、太陽が燦燦と照りつけた。すると旅人は暑さに耐え切れず、今度は自分から上着を脱いでしまった。これで、勝負は太陽の勝ちとなった。そんなお話しでしたね。
彼女は異常を指摘され、精密検査を受けるように言われたけれど最初検査を受けた医療機関では精密検査ができないこともあり、なかなか精密検査に行けなかったそうです。お仕事が忙しかったのかもしれないし、気が進まなかったのかもしれません。時間がたってしまい、意を決して再び以前の医療機関を受診したところ、担当の医者に 今日再検査をしてみても結局精密検査が必要になるから、うちでは検査(子宮頸がんの再検査も)できません。と言われ困ってしまい、イーク表参道にたどり着いたそうです。
たいていの場合、医者は結果や今後おすすめする方針を正しくお伝えしていると思います。ただ、それはあくまでも医療者サイドの都合であることが多いかとも思います。異常だから精密検査するのがあたりまえ、3か月後に再検査と言ったら、3か月後に来るのがあたりまえ、この考え方は医学的な知識を持っている者が医療を押しつけているように思えなくもありません。
もちろん、さまざまな疾患に対して標準的なガイドラインが各学会から出されていますので、それに則って方針をお伝えするべきであることは間違いありません。そしてさらに、患者さんがぜひそうしよう、再検査受けよう、精密検査受けよう と思うように伝え方を工夫する必要があると思います。
もちろん無意味に脅かしたりして怖がらせることはあってはならないですが、再検査や精密検査の必要性をきちんと理解していただいて、自分から そうしよう、そう思えるような道を作るのも私たち知識を持った医療者の仕事であると思っています。
北風に対し上着をおさえた旅人が、太陽の光で自ら上着を脱いだように。
自分からちゃんと再検査、精密検査に行けるような伝え方を心がけること。指示どおりに来院できなかった方への理解を示すこと。もし時期がずれていたとしても、自ら来院した気持ちに応えられるような医療を提供すること。
今日、北風と太陽のお話しをお聞きして、そんなことを感じた午後でした。