ファミリードクター

今日、50歳前後の姉妹がイーク表参道にいらっしゃいました。かなりお久しぶりの再会です。お二方とも慈恵にいたころに診察させていただいていた方であり、かつ、妹さんのお嬢さんの第一子は私がお産をとりました。
お嬢さんとそのお子さんの写メを見せてくださったり、私も何度も会ったことのある婿さんの話しを聞かせてくれたり、とてもうれしい再会となりました。

もともとのはじまりは数年前。お嬢さんが17歳で妊娠に気がつき私の外来へいらっしゃいました。彼も高校の同級生。もうすぐ卒業 という夏だったと思います。初めての診察からお母さんである妹さんはつきそって来てくださっていました。
17歳、しかも高校生 となると、妊娠した娘やその交際相手に対し怒りをあらわにしたり、当然のように妊娠継続を反対する保護者が多いです。そんな中、妹さんは『さずかった命だから』と出産に賛成した上で、彼の家にもその方向になるよう働きかけをされました。

17歳だったお嬢さんもとてもしっかりした方で、自分の意思で生んで育てることを私にきちんと表明してくださいました。

よかったよかったと思っていたら、次の難関がやってきました。高校の規則です。お母さん(妹さん)を通じ、妊娠していること、このまま出産を希望していること、相手は同級生であることを学校側に伝えたところ、まだ新しい高校だったようで、以前にこういったケースがないとちょっとした騒動になってしまいました。ちょうど夏休みにかかっていたため職員会議を4週間後に開くと言われ、そこで彼と彼女2人の退学勧告が決まる なんていう大ごとにまで至りました。彼のご両親も息子が退学になってしまっては困ると、やはり妊娠継続をやめてほしいと言い出されたり。

職員会議の4週間後を待っていたら万が一の中絶もできなくなるころでしたので、お母さんを通じ学校にかけ合ってもらいました。そんな努力も功を奏し、どうにか2人とも退学は免れることができました。大学進学を希望していた彼はちゃんと就職内定を得、準備は着々と進んでいきました。本人も、どんどん大人びていったのを覚えています。もともと持病のあったおばさん(お姉さん)もちょっと遠くにお住まいなのに私の外来へかかられるようになり、めいの妊娠経過を近くで支えてくださっていました。

たしか、3月が分娩予定日だったと思いますがお産はちょっと早まり、2月末の卒業式前に無事にお産を迎えたけれど卒業式には出られなかった そんなエピソードのあるファミリーです。今では第二子も生み、元気にがんばって子育てしているようです。婿さんもしっかり稼いでくるようになり、今よりもちょっとだけ広いアパートに引っ越すそうです。

人と関わっていくことは、積み重ねていくとその人の人生に関わっていくことになります。そのうちその人だけでなく、ご家族やまわりの方たちとの関わりも生まれてきます。その関わりを大切にしていくとご縁であったり絆であったり、を感じることができるのかなぁなんて思ったり。

ファミリードクターなんて、なかなかなりたいと思ってなれるものでもありません。特に婦人科であれば男性のご家族と関わる機会は少ないです。でも、一回一回、一件一件の関わりに思いをこめて過ごしていくことであたたかい繋がりをつくりあげていけるのだろうと思っています。

イーク表参道にお越しいただいたおふたりに、そんなことを思い起こさせていただけたことに感謝しています。

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